vol.4 『民事信託を支援するチーム作り(3)』

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先日、不動産会社が主催している相続に関するセミナーを受講する機会がありました。
そのセミナーでは、相続税に関するテーマに加え、民事信託で財産管理を、というテーマがありました。
私も講師として信託に関するテーマを話す機会は多いのですが、受講者として参加する機会はこれまで少なかったため、今回の受講を大変楽しみにして参加させていただきました。

セミナーでは、受講者に信託による財産管理のメリットを伝えることが狙いとなるため、その仕組みを紹介することを中心に内容が構成されていました。
ある家族の状況を説明し、その家族がなぜ信託を検討することとなったのか、その家族の課題や問題を解決するにはこの信託が有効という説明の形式で、3例ほど事例が紹介されました。
セミナー終了後、財産管理に課題を感じていたのでしょうか、ある受講者は、信託を検討してみたいと、講師に話しかけている姿も見られました。
セミナー内容の感想をここでは述べませんが、受講してあらためて民事信託は専門家のチームで対応することの必要性を感じました。

民事信託で財産管理を行うステップとして、
①信託の検討
②信託の設計
③信託契約の作成
④信託契約の締結、受託者への財産の移転
⑤信託期間中の受託者による財産管理
⑥信託の終了、信託の清算
という一連の流れがあります。委託者やその家族の状況により信託の準備から終了までの期間は異なりますが、民事信託では、家族等の受託者が、信託契約に従って信託財産を管理することが必要です。

信託に関わる専門家として、民事信託の仕組みを作った後は、受託者の責任で各専門家の支援を受けて民事信託を継続していって下さい、とは無責任です。上記の①から⑥まで、問題の生じないように体制づくりを検討し、信託期間中には受託者による財産管理を外部から支援してあげることも大切です。

民事信託による財産管理を希望する方の相談窓口となる専門家が、それぞれの専門領域(法務、税務、財産管理の実務など)で民事信託を支援する専門家と連携できるネットワークを有していれば、問題が生じないように支援することができると思います。しかし、そのような専門家のネットワークは残念ながらまだ構築途上です。緒に就いたばかりというのが現状です。

民事信託を希望する方が相談する専門家は、残念ながら、信託に関する全てのことを網羅する万能な専門家でないと考えます。民事信託における多岐にわたる専門領域について、それぞれの専門家がその専門領域において関与する民事信託の専門家チームを作り、そのチームで対応することとすれば、検討にもれのない安定した信託の仕組みとその後の財産管理が可能となります。
士業である専門家のチームメンバーが連携するためには、民事信託を十分に理解するコンサルタントがコーディネートすることで、チームの連携がよりスムーズになるのではないかとも考えています。

民事信託を支援できる専門家のチーム作りを急いで進めていく必要があると、意を強くしてセミナー会場を後にしました。

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石脇俊司(いしわき しゅんじ)
一般社団法人民事信託活用支援機構理事
証券アナリスト協会検定会員、CFP、宅地建物取引主任

お問い合わせ:shunji.ishiwaki@shintaku-shien.jp

外資系生命保険会社、日系証券会社、外資系金融機関、信託会社を経て、民事信託活用支援機構の立ち上げに参画。金融機関での経験を活かし、企業 オーナー等の資産承継対策の信託実務を取り組む。会計事務所と連携した企業オーナーや資産家への金融サービスの提供業務にも経験が豊富である。民事信託の健全な活用とビジネスを目的に税理士、弁護士、司法書士らを会員として発足した専門協議会組織「一般社団法人民事信託活用支援機」の中心的な存在としても活躍中。

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