vol.12『民事信託を活用した事業承継のための信託のプロセス その2』

未上場企業オーナーの事業承継に民事信託を活用する際の実務のポイントについて連載しています。
今回はその第2回目。

 

 

プロセス2:財産の評価額を把握する

プロセス1において、未上場企業オーナーと信頼関係を構築し、オーナーの保有財産を開示してもらえたとしても、各財産の評価額がわからなければ、全ての財産額を把握できません。

会社株式の評価額は、税理士が算出した相続税評価額で把握することがベストですが、算出には時間とコストがかかります。まずは実務を進めていくために、会社の決算書を見て、純資産レベルで株価を推定することから始めればよいと考えています。

特に事業承継対策としての民事信託では、他の相続人の遺留分について配慮する必要があります。事業承継対策の基本パターンとして、民事信託を活用して後継者に株式を集中することを考えるからです。

遺留分は、相続時点での価額で算出されるため、株価が将来上昇すれば後継者以外の相続人の遺留分を侵害する可能性もあります。設計者はそのことも十分認識したうえで実務を進めていく必要があります。
資産の評価額を算出する税理士とも信頼関係を作り、連携して実務を進めていかなければなりません。

(続く)

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石脇俊司(いしわき しゅんじ)
一般社団法人民事信託活用支援機構理事
証券アナリスト協会検定会員、CFP、宅地建物取引主任

お問い合わせ:shunji.ishiwaki@shintaku-shien.jp

外資系生命保険会社、日系証券会社、外資系金融機関、信託会社を経て、民事信託活用支援機構の立ち上げに参画。金融機関での経験を活かし、企業 オーナー等の資産承継対策の信託実務を取り組む。会計事務所と連携した企業オーナーや資産家への金融サービスの提供業務にも経験が豊富である。民事信託の健全な活用とビジネスを目的に税理士、弁護士、司法書士らを会員として発足した専門協議会組織「一般社団法人民事信託活用支援機」の中心的な存在としても活躍中。

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