民事信託を活用した事業承継のための信託のプロセス その5

信託財産が株式の場合の議決権の行使【1】

会社オーナーが所有する自社の株式を信託した場合、自社株式は受託者に信託譲渡され、株主は会社オーナーから受託者に変更となります。そのため以降の自社株式の議決権行使は、株主である受託者が行っていくこととなります。

信託契約が締結され信託が開始された以降、受託者は、信託目的を実現するために信託財産である株式の管理を行っていきます。信託財産の管理方法については、信託契約に定めがあり、その定めに従って受託者は株式を管理していくこととなります。

信託財産の株式の議決権行使については、受託者が主体的に議案の内容を判断して議決権を行使するのではなく、「議決権行使の指図者」を定めている信託がほとんどであると思われます。その定めがある場合、受託者は指図者の指図に従って議決権を行使していきます。

受託者は、会社より株主総会の議案を受け取り、その議案を指図者に提示し、議案についての議決権行使の指図を指図者から受け入れます。
受託者の信託事務が正しく行われるために、受託者は指図者の指図を書面にて受け入れ、その書面に従い議決権を行使したという履歴を残すことも必要です。
受託者は、信託事務を適正に行っていることを受益者に説明することも必要なため信託財産の管理に関わる事項については記録を正確に残していかなければなりません。
(続く)

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石脇俊司(いしわき しゅんじ)
一般社団法人民事信託活用支援機構理事
証券アナリスト協会検定会員、CFP、宅地建物取引主任

お問い合わせ:shunji.ishiwaki@shintaku-shien.jp

外資系生命保険会社、日系証券会社、外資系金融機関、信託会社を経て、民事信託活用支援機構の立ち上げに参画。金融機関での経験を活かし、企業 オーナー等の資産承継対策の信託実務を取り組む。会計事務所と連携した企業オーナーや資産家への金融サービスの提供業務にも経験が豊富である。民事信託の健全な活用とビジネスを目的に税理士、弁護士、司法書士らを会員として発足した専門協議会組織「一般社団法人民事信託活用支援機」の中心的な存在としても活躍中。民事信託の21の活用事例を紹介した「相続事業承継のための 民事信託ワークブック」(法令出版)発売中。

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