vol.3 『民事信託を支援するチーム作り(2)』

ce4716dcf863e3b17201925b0c1b5792_s信託は、受託者による財産管理の制度です。信託の受託を業とする信託銀行や信託会社ではなく、家族や家族が関係する法人が受託者となる信託を、このブログでは民事信託と言っています。
受託者が信託銀行などの専門家ではなく、いわゆる“素人”の家族等が担うことと、税務、法務、財産管理の実務と信託に係る専門領域が幅広いことから、民事信託は各専門家の支援が必要です。

●専門家同士の連携が必要
中小企業オーナーや資産家の一番の相談先は、会計事務所でしょう。情報媒体などで信託に関する話題が増えていくことで、今後、クライアントが信託について会計事務所に相談する機会も増えることが予想されます。しかし、現状では、信託に係る全ての領域をカバーして万全な体制でクライアントのニーズに応えることのできる会計事務所は少ないため、クライアントが会計事務所に相談してもクライアントのニーズに合った民事信託の仕組みの実現が難しいと考えます。
クライアントの相談窓口となった会計事務所が、信託に詳しい法務の専門家、財産管理などの信託実務にくわしい実務家と連携する体制作りができれば、クライアントのニーズに応えることができると考えます。会計事務所内に信託に関する全てに精通する人を育てる又は各専門家を会計事務所が雇うといったことの必要はありません。
税理士や会計事務所の職員が、一定レベルで信託を研究することにより、クライアントのニーズを詳しく聞き、信託の概要を設計することは可能と考えます。しかし、それを信託契約にすることや、考えた仕組みで継続して財産管理することができるかをチェックすることは、各専門家との連携が必要です。クライアントの窓口として会計事務所が対応し、クライアントの守秘義務をしっかり守りお互いの専門領域を冒さない形で、他の専門家が参加して、民事信託の仕組み作りに対応することができれば、万全と考えます。

●他の専門領域を補完しあう関係
先日、私が理事を務めている民事信託活用支援機構が、税理士、弁護士、司法書士、保険営業に携わる者を対象に、『事業承継における民事信託と生命保険の活用』というテーマでワークショップを行いました。4名程度でグループを作り、中小企業オーナーの事業承継の事例について、グループごとに議論して、オーナーへの提案をまとめることを課題としてワークショップを運営しました。各グループに税務、法務、保険営業に携わる者を配置したため、自身が専門とする以外の専門領域について、議論のなかで実務や理論を教えあうといった状況となり、非常に活発な議論となり盛り上がりました。
弁護士は事業承継の税務についてカバーしきれていないので税理士に聞く、税理士は相続の民法上の問題点について弁護士から理論や実務を聞くなどお互いを補完し合う形で、中小企業オーナーへの提案をまとめてもらいました。

民事信託においても、クライアントに対する提案について、各専門家が議論し不足する専門領域をカバーし合う体制づくりができれば、万全な提案もでき、クライアントの窓口となる会計事務所にも不安がないと考えます。
さらに、このような専門家同士の連携については、連携する仕組みをコーディネートする者が必要となります。次回は、そのあたりについて書いてみたいと思います。

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石脇俊司(いしわき しゅんじ)  石脇俊司
一般社団法人民事信託活用支援機構理事
証券アナリスト協会検定会員、CFP、宅地建物取引主任
お問い合わせ:shunji.ishiwaki@shintaku-shien.jp

外資系生命保険会社、日系証券会社、外資系金融機関、信託会社を経て、民事信託活用支援機構の立ち上げに参画。金融機関での経験を活かし、企業 オーナー等の資産承継対策の信託実務を取り組む。会計事務所と連携した企業オーナーや資産家への金融サービスの提供業務にも経験が豊富である。民事信託の健全な活用とビジネスを目的に税理士、弁護士、司法書士らを会員として発足した専門協議会組織「一般社団法人民事信託活用支援機」の中心的な存在としても活躍中。

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