民事信託支援のポイント  ~その2~ 「信託検討時の依頼者とのコミュニケーション」

実務では、資産を所有する方が高齢のため、所有者本人ではなく、その家族から相談を受けることがあります。家族関係や資産の状況に関する情報を家族から聴くことはできますが、民事信託の設定者である委託者は、その家族ではありません。きっかけは家族でも、相談を受け検討を始める初期の段階で必ず本人と会い、ご本人のお考えを聴くことに努めることが重要です。本人の意思無くしては、信託契約に定める信託目的も受益者の定めも行うことができません。

依頼者が高齢の場合、その依頼者への説明資料は、十分に配慮する必要があります。なるべく専門的な用語を使わずに説明できるよう図などを駆使します。資料の大きさもA4サイズではなく、A3サイズにして読み取りやすい大きさにすることなど配慮が必要です。

面談を重ねていくことで、依頼者の課題を理解し明らかにします。面談の都度、面談記録を作成し、その記録を依頼者や関係者と共有しながら次のステップへと進んでいくことが重要です。

面談の回数が増えていくと、依頼者との信頼関係が生じてきます。相談を受ける専門家・実務家は依頼者の信頼を得て、依頼者の本音を聴きだせるよう心掛けます。依頼者の心の声が信託の設計には欠かすことができません。

一方、依頼者への思い入れだけで信託を検討すると、いわゆる『危ない信託』を生み出してしまうことがあり注意が必要です。例えば、事業承継を目的とする信託の場合、後継者に株式(議決権)を集中して承継する信託の仕組みを検討しますが、その信託を作り出すことにより、委託者の資産承継において不利となる人が生じることにもつながります。信託を設定したために、将来、委託者の家族の相続においてもめ事を生じさせる原因を作らぬよう、多くのことを配慮して仕組みを検討していきます。他の家族への配慮として、遺言や生命保険などの他の制度もあわせて検討していきます。こういったことからも、民事信託の設計者は高いスキルが求められます。

委託者や信託について相談を持ち掛けた家族とは何回もコミュニケーションを重ねますが、その他の家族とも、信託の設定前にコンタクトをとっていくことを心がけます。信託に直接関わらない家族の考え方や意見に触れる機会を作り、検討した仕組みが受け入れられる家族関係であるか、相談を受けた専門家・実務家は肌間隔で確かめます。

相談され、まず依頼者から聴く第一次情報、聴いた情報を整理したうえで聴く第二次情報、第二次情報をふまえて法務、税務面を検討したうえでさらに聴く第三次情報、このようにして情報取得のためのコミュニケーションを積み重ね依頼者とその家族の関係を理解することが必要です。

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石脇俊司(いしわき しゅんじ)
一般社団法人民事信託活用支援機構理事
証券アナリスト協会検定会員、CFP、宅地建物取引主任

お問い合わせ:shunji.ishiwaki@shintaku-shien.jp

外資系生命保険会社、日系証券会社、外資系金融機関、信託会社を経て、民事信託活用支援機構の立ち上げに参画。金融機関での経験を活かし、企業 オーナー等の資産承継対策の信託実務を取り組む。会計事務所と連携した企業オーナーや資産家への金融サービスの提供業務にも経験が豊富である。民事信託の健全な活用とビジネスを目的に税理士、弁護士、司法書士らを会員として発足した専門協議会組織「一般社団法人民事信託活用支援機」の中心的な存在としても活躍中。民事信託の21の活用事例を紹介した「相続事業承継のための 民事信託ワークブック」(法令出版)発売中。

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